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第227話「Desert hero」第21話

 投稿者:ていきっと。メール  投稿日:2007年 9月24日(月)11時31分36秒
編集済
   戦闘中なら、誰にとっても味方の援軍は望ましいものだ。それだけその戦闘における勝率は上がるし、自身が生き残りやすくなるのだから。

 しかし、その時のアリマ中尉はそれを喜べなかった。と言うよりは何が起きたのかも良く理解してはいなかった。

―――こいつ、何処から湧いて出やがった………?

 彼は、自分の心中に浮び上がった疑問はすぐに解けた。一機のドダイYSが低空をフライバイするのがグフの肩越しに見えたからだ。

「そうだ!ここがセレンゲティだ!」

『そうか!怪我は無いな!?そこの2人を連れてここを離れろ!』

 と言いながら、グフはその鋼鉄の腕で横転したエレカを元通りに大地に置いた。

―――コイツ、上官に向かって何様のつもりだ!?

 と思ったが、今の自分は階級章を付けていない事を思い出す。気を取り直して、

「曹長!
 敵が浸透してくる!あそこにいるゲルググが指揮官だから、彼の指示に従ってくれ!」

『了解!』

 返事をするやいなや、そのグフはヨシフ機に近づいて行った。
 短いやりとりを交わした後、2機ははじかれるように敵が来た方向に向かって移動を開始した。

 ヤレヤレ、と嘆息を漏らしながら気絶して横たわるキエフを抱えながら、未だ呆然として足を横に投げ出してへたりこんでいるミンスク

の頭をポン、と軽く叩く。

「今の内だ。逃げるぞ」




 数日後。

「では、2機目のHLVの準備が終わったと?」

「うむ。後は味方の宇宙艦隊が、HLVの打ち上げに呼応して作戦行動を開始。軌道上で回収する………手筈になっている」

 司令官執務室の椅子に深く腰をおろしたユギノフ大佐は、くるりと椅子を廻すとヨシフに向き直った。

「帰還者候補のリストはもう受け取った。問題は無かろう。………ところで、この間合流したディン曹長は今どうしている?」

「はい、どうも単独で特殊任務に就く事が多かったらしく、MS同士の連携行動にはまるで向いていません。ですので、遊撃任務につけて歩兵部隊の援護にまわす事にしました。
 ………一応彼女も帰還者リストに入れておりますが、状況次第ではどうなるか………」

 ユギノフ大佐は椅子から立ち上がると、制帽を手にとって目深にかぶった。

「人事を尽くして天命を待つ、だよ。
 思いつく限りの策は講じた。後はHLVに乗った将兵が無事に本国に帰りつける事を祈ろう。
 では、これより司令部を2つに分ける。後は打ち合わせどおりにやるぞ」

「了解」

 ヨシフは軍靴の踵をかちり、と鳴らして退室するユギノフを見送った。



「隊長!」

 ユギノフと入れ違いにキエフとミンスクが入室してきた。

「よし、作戦開始だ。キエフ、現在の敵の位置は?」

「58Gの地点に有力な機甲部隊を確認。MSを含めた強力な敵が集結中です。偵察によれば行動開始は間もなくと思われる、との事です」

「うん、ミンスク。こちらの状況は?」

「現有戦力の全てが陣地に配置済みです。それと、MSですが、私達が使っていたドムの修理が完了したと整備班より報告がありました」

「よろしい。では………」

 ヨシフは帽子掛けにかかっていた制帽を掴むと、歩き出した。

「作戦開始だ」




 同時刻、サイド6某所。

「ミスター・アジム、では、例の件は?」

「ああ、手配はしてあるよ。艦隊の地球軌道への到着時間を少々『調整』する。アフリカ方面軍団に何かをするつもりなら、その隙に上手くやる事だな」

「ご配慮、痛み入ります」

「核でも使うのかね?」

「まさか!
 ただ、世の中にはABC兵器(核・生物・科学兵器の総称)以外にも破壊力の強いモノはたくさんある、そういうことですよ」

「まぁ、好きにしたまえ。こちらが要求したものは?」

「手配済みですよ。我々のボスも貴方に宜しく、と言っておりました」

「そうかね」

 アジムは掌中のブランデーグラスをゆらして香気を楽しみながら、言葉に出さずに呟いた。

『ヨシフ・リピンスキー君。悪いが君にはアフリカの土になってもらう。私の人生設計のためにな………』



 更に数日の後。

 塹壕で双眼鏡を構えて油断無く周囲を警戒していた兵士を、脇にいた別の兵士がつつく。

「オイ」

「何だ」

「あっち、あれを見てみろ」

 指を指した方角に双眼鏡を向けてみる。

「?」

 何も見えない。

「違う、もっと上だ」

 改めてそちらの方に視線をむけると、払暁の空中に何か動く物が見えた。

「なんだぁ?流星………じゃないよな」


 それは大気圏の遥か彼方から、音よりも早く飛来した。
 それは、大気圏に突入した後、円筒形の外装を排除。内部に納められた数百のケースを振りまいた。
 そして、それは風に煽られながらも、あらかじめ設定された高度に達すると、その体内に充填されていた高揮発性の燃料を噴射。気化したそれはセレンゲティ宇宙空港の中心を外しながらも西側約1/3を覆う。燃料を充填していたケースに備わっていた点火装置は、適切な時間の後、雷管を作動させた。そして。



 圧倒的な圧力を伴った爆風は、衝撃波と共にヨシフが眠る陣地を揺るがした。

「何事だ!?」

 ヨシフは毛布を跳ね飛ばすと、キエフを伴って陣地から出て、爆発のあった方向に視線を向けた。

「キノコ雲だと!?………奴ら、核を………!?」

「いや………アレは核じゃない。アレが核なら、俺達もとっくに放射線で死んでる」

「じゃあ、アレは………?」

「奴ら、FAE(燃料気化爆弾)を使ったんだ。ヒロシマ型の原爆と同程度の破壊力がある。それよりも!」

 ヨシフはキエフに向き直った。

「ただちに戦闘準備だ。奴ら、もうじきここになだれこんでくるぞ」
 
 

第226話「Desert hero⑳」

 投稿者:ていきっと。メール  投稿日:2007年 6月30日(土)23時00分22秒
編集済
  (※筆者注)
 以下は一年戦争終結から数年が経過した頃に、元ホワイトベース乗組員、カイ・シデン氏がフリージャーナリストとして有名になる以前に録音された音声記録である。


―――………と、言う事は、貴方がアフリカ大陸で戦っていたのがその時期にあたると?

 「ああ、その時のセレンゲティ宇宙空港守備隊の総司令はユギノフ大佐。私と部下達は彼の指揮下で戦っていたんだよ」

―――あの時期、地球のあちこちでは、宇宙に脱出するジオン軍が同様の撤退作戦を実施していました。

 「そうだね。だから、別に私達だけが過酷な戦いを強いられていた訳じゃない。戦場ではわりとよくある話だよ」

―――しかし、他の地域ではもっとたくさんの犠牲がでたそうですよ。貴方のおかげで、アフリカ方面の撤退作戦が成功したのでは?

 「君ね!それを名誉な話だというのなら勘違いと言うものだよ!
あの戦場で戦っていたのは、私だけじゃない。
君も従軍していたのなら分かると思うが、君が今こうしていられるのも戦友たちの犠牲があったからこそじゃないのかね!?」

―――ええ。しかし、サイド3で当時の関係者に話を聞いたところ、『自分が生きて帰る事が出来たのは英雄・リピンスキー大尉のおかげだ』と言う人が多かったものですから。

 「(苦笑)私は英雄なんかじゃないよ………その称号は、砂漠で散っていった将兵にこそ相応しい。それにだ、私は有能な人間でもなんでもない。敵も味方も………殺しすぎた」

(無言のまま数分経過)

―――これから、どうやって生きていくんですか?

 「それはまた、哲学的な命題に聞こえるね。もしかして君自身も迷っているのかね?」

(しばし無言が続く)

 「ただ、分かっているのは………少なくとも当分の間はサイド3には帰れないという事。この事を、私は誰にも話さずに生きていくと言う事だけだね」

―――ご家族のところには?

「私には、帰る家がない。失くしてしまった」

―――ご家族は………あの戦争で?

「いや、戦闘には巻き込まれなかったんだがね。戦争が始まる前から色々あったのさ。だから帰るに帰れないのさ」

―――………?

「それにだ。もし、娘に再会したとしても、『自分が地球で何をしていたのか』とか『何があったのか』とかの話は出来ないよ。せいぜいが『パパは、地球でお仕事をしていたんだよ』くらいしか言えないね。もっとも、別れた女房が会わせてくれるとも思えないがね」

(この後、暫く会話は続くも、取りとめの無い内容に終始する)


(※筆者注)
 このインタビューの相手はヨシフ・リピンスキー大尉(階級は一年戦争終結時)。
 この記録は、カイ・シデン氏の死去20年後に、彼と親交のあった某氏の書斎から発見された。録音された時期ははっきりと判らないが、内容からUC0080~0083(デラーズ紛争開始前?)頃と推測される。
 このインタビューの相手であるヨシフ・リピンスキー大尉は、近・現代戦史においても謎の多いジオン軍特殊部隊『ステーク・バット』と何らかのつながりがあったのではないかと推測されている。

 ヨシフ・リピンスキー大尉は、一年戦争末期にアフリカ方面軍に在籍。セレンゲティ空港守備隊総司令官K・ユギノフ大佐の下でMS小隊を指揮。自軍の撤退を援護し、結果として撤退作戦を成功に導く。しかし、同空港守備隊は彼を残して全員死亡し、彼自身は負傷して身動きが取れないところを連邦軍によって捕虜にされた。
 グリプス戦役の前後から彼は歴史の表舞台に再び姿を現したが、一年戦争終結後、暫くの間彼が何をしていたのかのは不明であった。

 上記のインタビューは、戦後彼が捕虜収容所から釈放された直後に録音されたと思われる(日時を示す資料は残っていない)が、シデン氏はこれを公表しなかった。
 この理由としては、後年の研究者によれば『この時期の彼自身も戦争の記憶から精神的に安定していなかったから』、あるいは『戦後の混乱期の最中にあって、当時まだハイティーンであったシデン氏がジャーナリストとして身を立てていく決心をしていなかったからであろう』、更には、『当時のシデン氏は地球連邦軍の監視下にあり、発表の時期を逃した』等々の意見(あるいは憶測)があるが、定かではない。

(A・オオツカ著『戦乱の宇宙世紀』クロス・ストリート・ジャーナル社刊より抜粋)



 戦争の最中であれば、まして銃火飛び交う中に身を置く身であれば、男女問わず銃を取らねばならない。
 ヨシフはミンスクがハンドルを握る軍用エレカにアリマ中尉と共に飛び乗った。

 「少尉!俺を格納庫へ!」

 「了解!アリマ中尉、荷台にヘルメットとアーマベスト(防弾ベスト)があります!」

 「これか!?」

 「それと、2人とも階級章を外して下さい!」

 「何だと!?」

 「奴ら、指揮官かどうかを階級章で見分けて狙い打ちするんです!」

 ミンスクはエレカを猛烈な勢いで急発進させた。アリマは凄まじい振動の中で荷台から装備を引きずり出すと、それを助手席に座るヨシフに手渡し、自分もそれらを身につけ始める。
 ヨシフは未だ事態を把握しきれていなかったが、いつまでも呆けているわけにはいかない。手早く装備を整えた。

 「いつもの『定期訪問』ですよ!」

 ミンスクは緊張と興奮から、耳朶まで紅く染めてヨシフに怒鳴った。

 「ここじゃ毎日がこんな有様なのか!?」

 「ええ!連中、MSは持っていないんですけど、対戦車ミサイルや迫撃砲弾まで持ちだして嫌がらせをするんです!」

 正面を見据えてハンドルを握るミンスクは兵士の表情を見せていた。ミンスクと別行動を取っていたのは長くは無かったとはいえ、彼女の顔には経験を積んだ者特有の自信が見てとれた。その横顔を、ヨシフは『美しい』と思った。



 「ええい!くそったれが!」

 脚部を破壊され、うつ伏せに転倒したザクのコクピットから、キエフが這い出して来る。足回りを破壊されて身動きのとれないMSは、格好の標的となる。

 「少尉!こちらへ!」

 塹壕の中から、下士官が身を乗り出して手招きをする。しかし、次の瞬間。

 「!?」

 砲弾の破裂音とは異質な、甲高い銃声が響く。
 キエフの視界の中で、顔の中心を打ち抜かれた下士官が、後頭部から噴水のように脳漿を撒き散らす様が見えた。
 さらに、ひゅるる………と迫撃砲弾が曲線を描いて塹壕に飛び込んだ。キエフが思わず撃破されたザクの陰に身を潜めると、轟音と共に熱風に頬をはたかれた。
 キエフが恐る恐る顔を上げると、人間の「部品」があちこちに散らばり、肉が焼ける臭いが鼻を突いた。

 「畜生………」

 俺もここまでか、と諦観と悔しさが脳裏をよぎる。
 その時、司令部施設の方角から土煙が上がるのが見えた。目を凝らすと、ヨシフのパーソナルマークを付けたゲルググがホバー走行しながらこちらに向かって来るのが見えた。



 「見えた!工兵は全滅か!」

 ゲルググのモノアイが捉えた映像に、撃破されたザクの姿と黒煙を上げる塹壕が見えた。さらに300m程先から、荷台に機銃や対MSミサイルの発射筒を備えたジープやピックアップトラックの姿が見えた。どうやらゲリラの車輌らしい。
 ビームライフルの筒先を向け発砲。しかし、不規則にジグザグ走行をする車輌を捉えられない。
 この手の車輌は民生用のクルマに武装を施しただけの簡便なもので、装甲などは施されていない。乗り手を守るのは機動力だけだが、MSの武装を使うには的が小さすぎた。

 「クソ!………キエフ、無事か!?」

 モニター画面にザクの残骸から手を振るキエフの姿を確認すると、それを背後に隠すように機体を前進させる。左腕に増設された機関砲を掃射しながら、発煙弾を発射する。白煙があたりを包み込む。

 「ミンスク!アリマ中尉!」

 「了解!」「オウ!」

 地面の起伏に車体をバウンドさせながら、ミンスク達が乗ったエレカが現れた。後部座席のアリマが立ちすくむキエフの腕を掴んで強引に引きずり込むと、エレカはドリフト気味にUターンを開始。そのまま逃走を開始………するかに見えた。が。

 「何ッ!」

 200m程の距離を駆け抜けたエレカの側面にロケット弾が着弾。車体が爆風で横転させられ、やがて仰向けになって止まった。

 「無事か!?」

 アリマが返事の代わりに喚いた。

 「隊長、後ろ!」

 ゲルググの足元をゲリラの武装トラックが2台駆け抜けた。煙幕は強風に煽られて、いつの間にか消えかかっていた。

 「しまった!」

 機関砲を慌ててそちらに向けて発射。一両をその弾幕に捉えて大破させたが、もう一台がミンスク達の方向に向かう。

―――駄目か!?



 キエフを収容して安堵の溜息をついたミンスクは、次の瞬間、衝撃を感じると同時に視界が90度傾いたのを自覚した。慣性の法則は横転したままのエレカを数10m前進させた。耳の横20cm程を地面が勢いよく流れていくので、ミンスクはハンドルを握り締めて助手席側に頭を傾けた。

―――ああ、シートベルトをしておいて良かった。

 ミンスクが頭の片隅で悠長にもそんな事を考えていると、車体の行き足が止まり横転した車体は今度は腹を見せて倒れた。ミンスクは完全に視界が180度傾いた―――というより、上下逆―――のを感じた。
 ショックで感覚が失せた手でシートベルトを外すと、なんとか運転席から這い出した。そのまま数分間―――彼女の主観では。実際には数秒ほど―――茫然自失のままでいたミンスクはふと、『アリマ中尉とキエフはどうしたのかしら?』と気付き、ゆっくり首を巡らせた。

 こわばった首筋が、こきんと音を鳴らした。
 後ろのほうでアリマが何事かを怒鳴っているのが見えた。あれ?と思ってそちらの方角を見ると、敵の車輌がこちらに向かってくるのが見えた。

 助手席にすわるゲリラが機銃の筒先をこちらに向けるのを、ミンスクはぼんやりと他人事のように見た。




 アリマは爆風で車体が横転するのと同時に、キエフを抱え込んで車体から―――爆風が来たのと反対方向に―――飛び降りた。キエフの頭を胸に抱いたまま、何度か地面をバウンドする。
 衝撃で気を失いかけたが、何とか目を見開いてそれに耐える。と、視界が赤く染まった。

―――ああ、頭のどこかを切ったな。

 目をこすって視界を確保する。と、薄まりかけた白煙を突いて、ヨシフの駆るゲルググの足元を通り抜ける車輌が見えた。

「隊長!後ろ!」

 慌てて怒鳴ると、ヨシフもそれに気付いたらしく、機関砲弾をその内の一両に叩き込む。が、もう一両がこちらに向かって来るのが見えた。

―――目標は俺達か!

 アリマはその車輌の運転手を睨み付けた。と、一瞬視界が暗くなる。
 出血多量か?反射的に空を見上げると、巨大の人型のシルエットが見えた。これが日光を遮ったのだ。
 隊長か?と思ったが、よく見ると青白く塗装されたグフだった。その肩には―――

 「虎?白い虎なのか?」

 白虎のマーキングを肩にあしらったグフは、地響きを立てて着地。そのまま姿勢を低くしたままでダッシュすると、まるでサッカーボールか何かのようにその車輌を蹴り上げた。空高く舞い上がったそれが落ちてくるところを、そのグフはヒートソードで串刺しにした。

 『貴様!』

 外部用スピーカーから流れる声は女性だった。アリマは呆然としながら「へ?」と間抜けな声を上げた。

 『自分はディン・ミンファ曹長である!セレンゲティ宇宙空港はここか!?』
 

第225話「時には昔の話を」

 投稿者:月下  投稿日:2007年 2月 9日(金)16時36分41秒
編集済
  宇宙世紀0079.12月中旬、オーストラリア・メルボルン基地セカンドオフィス。
一人の男が手に持った書類をうちわのように扇ぎながら、廊下を歩いていた。
向かった先は指揮士官の居住区、その一室である。
「入るよ、大尉」
ノックをすることも、また相手の返事を待つこともなく男は部屋に足を踏み入れた。
「ドクター、ベルくらい鳴らしたらどうですか?」
出迎えた男、ウィル・トリッシュは苦笑を浮かべながら男を歓迎した。
「いちいち言ってたら、この暑さで干物になっちゃうよ。
 やはりクーラーが効いた士官居住区はいいね」
にべもなく言う。
「それで?ご用件は?」
ウィルは手ずから紅茶を淹れ、ソファにだらしなくもたれかかる男に差し出す。
「うーん、さすが、トリッシュ家御用達の葉っぱ、いい香りだ」
「砂糖はご自由に。
 これが用件ですか?」
デスクに無造作に置かれた封筒をウィルが拾い上げる。
「そうそう、すこしばかり面白い人材を見つけてきたんだよ。
 あ、お茶おかわりもらえる?」
「ミュラ、ドクターがお茶を所望だ、構わないからポットごと持ってきてくれ」
「了解」
ミュラ・シュナイダーは後年、それを思わせないが如く、感情の消えたような声で答えると、ポットを男に差し出した。
「あいかわらず愛想がいいね」
「私に愛想はありません」
男の冷やかしにミュラは冷たく言い放つ。
「アラン・サンダース、ウィリアム・マツモト…
 ヨーロッパ・ロンドン空軍所属、で、今はフランス・コルシカ軍事刑務所に収容中…
 面白いのは認めますが、この二人、何をしたんですか?」
「腕は確かだ、現にアフリカ戦線でいい働きをしてくれてるんだけどね」
言葉に詰まる。
「アフリカは現在、包囲作戦が展開中ですよね?」
「先日の聞いただろ?基地がひとつ爆散したヤツ」
「ええ、死亡者が出なかったせいか、「フィレンツェの奇跡」だなんて言われてますね」
男はティーカップをソーサに置き、屈託のない笑顔でこう言った。
「その要因を作って、収監されてるのがその二人」
一瞬、寒い間が空く。
「それで、この二人をどうしようと?」
「いやね、大尉もミュラだけが部下ってのは可哀想だから、部下を―――」
「それでこの二人ですか?」
ウィルは半ばあきれたような表情をした。
「さっきも言ったように腕は悪くない、調査の結果、性格も良い方だ」
「しかし、刑務所に入れられていると」
「問題ない、私なら簡単に出してあげられる、というかもう釈放はしてある。
 閑職だが問題はないし、生きてればね」
頭を抱えるウィルにミュラが珍しく声をかけた。
「隊長、ドクター・シュトロハイムはこの手のことには頑固です。
 ここはおとなしくその二人と接見してはいかがでしょう?」
「いいね、素直なミュラちゃんは好きだよ?」
そんな言葉もミュラは素知らぬ顔でスルーする。
「分かりました、ドクター。とりあえず会ってみましょう」
男はニヤリと笑った。
「OKOK。この私に任せておきなさい」

この男、ラフィッド・ヴィンセント・シュトロハイムという。
後にある事件の中心人物となるが、それはまた別の機会に語ろう

そのころ、フランス・マルセイユ港。
オーストラリア行きの船に乗る二人の男がいた。
「オーストラリア、か…。どうやらそこが終焉の地になりそうだぜ?」
剃り残しのひげをなでながらウィリアムがつぶやく。
「ああ、そうらしいな…、せめてアリサに手紙でも書ければよかったのだが…」
アランが物憂げな表情で海面に視線を送った。


オーストラリアに到着し、覚悟を決めた彼らだった…
が。
彼らが通されたのは「歴史編纂室」という埃の臭いがきつい部屋だった。
辞令。
『両者に歴史編纂室の職務を任命する』

「ある意味、終わったな」
「銃殺じゃなかったのは幸いだが、閑職だな…」
二人は粗末に置かれた自分の椅子にだらしなく腰掛けた。

そして、運命のノック。
返事を待たずして開かれるドア。
「やあ、君達。幸せに過ごしてるかい?」
顔をのぞかせたのは、言うまでもない。
ドクター・シュトロハイムその人である。。。
 

ねじこみ砂漠英雄。実は機動科学講座だけどそれは内緒の話と言う特別編な「機動戦士科学講座」。君は生き延びる事が出来るか?

 投稿者:月下  投稿日:2007年 2月 6日(火)17時00分48秒
編集済
  「なげーよ!タイトル!」
「どうやら「ハヤテのごとく!」の影響らしいです」
「なんでもかんでも影響されるってのがうちの作者の悪い癖…」
「中佐、中佐。相棒の右京さんが入ってますよ」
「小ネタを仕込ませたらキリがないので本題!」
「はーい」
―――――
「2007年1月の投稿が零ってどういうことか?」
「いや、ほら人様には人様の事情がありますし…」
「甘い甘い甘い甘ーーーーーーーーいぞ、タカヤ!」
「私はミュラ・シュナイダーですが?」
「気にするな!
 私がなんかコーチな気分なだけだからな!
 というわけで今年はMOAを大団円で終わらせるくらいの覚悟で作者連中には励んでもらいたい!」
「予定じゃ去年で終わる予定でしたからね」
「そうなのだ!このまま間延びしてはいかんのだよ!」
「あのー、中佐?さっきから何気に口調がジオン軍人っぽくなってますが…」
「気にするなと言っているだろう!
 こんなこと気にしている間に敵は火星から月までやってくるぞ!」
「……………」
「さて、砂漠英雄(英単語表記が若干メンドイw)の中身だけど」
「ええ」
「宇宙世紀までジ●ンプとか●ンデーとかマガジ●ってあるのかしら?」
「それは違うかと…」
「だって気になるじゃないの!結構うちの作者、立ち読みとかしてるんだから!」
「コンビニにすればいい迷惑ですね…」
「なお、ジャン●はきちんと購入してるし、サンデ●はハヤテのごとく!ショートアニメ購入用にこの前買ったわ!」
「前者はとにかく、後者の動機があまりにも不純なんですけど…」
「●ガジンは立ち読みでOK、絶望先生とかしか見てないし。。。」
「へー」
「あら?淡白ね…」
「興味ないです」
「さて、そろそろお時間だわ!
 というわけでー、気合の2007年となることを諸君には期待している。」
「書けない事情をどうこう言っても…」
「ゴルァァァァ!」(パシッ※平手打ち)
「なにするんですかー!?」
「ミュラ候補生、我々はね、戦争をしてるのです。
 どんなにすばらしいネタが思いつけても、それが表に出なければどんなにがんばってネタを出しても意味はない」
「はあ…」
「それと発言するときは「よろしいでしょうか?教官殿」をつけ給え」
「そろそろ、元ネタが分からなくなってきている人が多いんじゃないでしょうか?」
「元から分からん人数のほうが圧倒的だ!」
「それはそれでダメっぽい…」
「で?ミュラ候補生、先ほどは何を発言しようとしたのかね?」
「候補生どころか今、大尉なんですけど…、ってまあいいや。
 あのですね。ぶっちゃけ~」
「なに?」
「こんな趣味に走った特別編書いてるくらいなら本編書いたらどうですか?」
「!!!!!!」
「なんだかんだで連邦作者も書いてないですよね?」
「!?!?!?!?!?」
「ネタが云々ってそれ、うちの作者が一番当てはまるんですが」
「やめたげて、やめたげて…、これ以上作者の心の傷をえぐることは…」
「ちょ…泣かないでください!」
「なんて、うそ泣き。いわく「女の涙は核をも凌ぐ最強兵器」」
「……………」
「あれ?大尉?」
「アンタって…」
「ん?」
「アンタって人はー!!!」
「ぎゃああああああああああああ!!!」

続く?
 

第224話「Desert hero⑲」

 投稿者:ていきっと。メール  投稿日:2007年 2月 5日(月)20時43分48秒
編集済
   「アリマ中尉」

 「何でしょうか、隊長」

 「あいつら、元気かな?」

 「え?………失礼、ミンスク少尉にキエフ少尉の事ですな?」

 「随分と長い間、顔を見ていない気がするんだが」

 「気になりますか?」

 「何ヶ月も会ってない気がする」

 アリマは、ふふっと笑みをこぼすと制帽をかぶり直した。

 「大丈夫ですよ。立派にやっておられますよ………貴方が仕込んだんでしょう?」

 「まあな………それに、数少ない将校の生き残りだからな。立派にやってて貰わんと困るが」

 「教え子を信じましょう。自分が隊長を信じているように」

 なんだかなぁ、とヨシフは思った。
 かつて士官学校の営庭で、アリマ教官にだれよりも厳しい訓練を課されてきた身からすれば不思議な気分になる。
 しかし、見込みのある人間に対して厳しい教育を施すのは、今となれば理解できないわけではない。


 宇宙歴0079年。
 12月中旬。

 ヨシフ・リピンスキー中尉率いるジオン軍アフリカ方面軍別働隊は、作戦通りセレンゲティ宇宙空港守備隊と合流を果たした。
 それも、撤退作戦前に想定された損害を遥かに下回るかたちで。あまりの損害の少なさ(戦闘はそれなりにこなしてはいたが)に、ジオン側は最初は半信半疑、次にそれを素直に喜んだ。
 どうやら、連邦軍側の航空戦力が何かの原因でその戦力の半分近く(あるいはそれ以上)を喪失したらしい。むろん、その原因の一つには、機動部隊と差し違えて壊滅した水上部隊の戦果もその一つであるのは確かだが、それ以上に敵の航空隊の活動は低調であった。

 「無事でよかった」

 「は、お蔭様で」

 「まるで3~4ヶ月ぶりのような気がするな………かけたまえ」

 任務完了を申告したヨシフとアリマは、守備隊司令官であるユギノフ大佐の向かい合わせにソファに座り、留守中の状況の説明を受けた。

 道理で楽だった訳だ、とヨシフは納得した。彼の知る連邦軍の戦術と言えば、圧倒的多数の航空隊が爆弾やミサイルを雨霰と振りまいた挙句にMS隊を投入してくる。ところが、自分達が戦った敵は、あまり航空隊の支援を受けずにヨシフ達に襲い掛かってきた(それでも数の優位は連邦軍側にあったが)。

 「納得してくれたかね?………さて、諸君。良いニュースと悪いニュースがあるのだが」

 「良いニュースから伺いましょうか」

 悪い知らせがあるんだろうな、と思ったヨシフは前者を選んだ。ユギノフ校長、もとい大佐殿が冗談めかして何かを言い出す時には何かがあるんだよな。現に彼の目は笑っていない。

 「まず、リピンスキー君。今日付け貴官は大尉に任官だ」

 ユギノフ大佐は内ポケットから小箱に入った階級章を手ずから渡した。

 「こんな時になんだが………おめでとう」

 そしてこれは私個人からの昇進祝いだ、とユギノフは未開封の葉巻を1カートン、ヨシフに渡した。

 「それでもう一つのニュースだが」

 そら、おいでなすったぞ。

 「アジム中佐を送り出した後は、今度は我々が逃げ支度を整えなければならん」

 ユギノフ大佐は自分の机の中から、シガレットケースを取り出して一本手に取った。
 吸い口を噛みちぎって火を点ける。彼の顔色はあまり良くない。
 ヨシフも受け取ったばかりの葉巻を取り出してアリマに手渡すと、自分も1本手に取った。

 「残ったHLVの数は2機。しかし、我々の全員を乗せられるだけのペイロードはない」

 自分の後ろに控えている美貌の副官に、あれを出してくれと伝えると、スクリーンに空港及びその周辺の地図が浮かび上がった。空港の周囲には十重二十重に防御線が敷かれていた。

 「そしてHLVの打ち上げには、それを援護する人間が必要だ。従って誰かが残ってHLVを守らねばならん………」

 ふぅー、と大きく紫煙を吐き出す。ヨシフにはその煙の中に彼自身の溜息が混ざっているように見えた。

 「貴官には空港守備隊の指揮をして貰う。
 やってくれるな?いや、これは命令だ。無論、貴官とその部下達が帰還できるよう、最大限の配慮はするが」

 ヨシフは、受け取った葉巻を火も点けずに手中で弄びながら顔を上げた。

 「私と部下達の扱いに関してですが」

 「何かね?」

 「まず、整備班の兵たち。それとミンスク少尉とキエフ少尉を。特にこの2人は可能な限り帰還リストの上位に」

 「ふむ」

 「その次にアリマ中尉を」

 「貴官はどうするのか」

 「小官は残ります」

 やがて彼は葉巻を吸い口を噛み千切って火を点けた。

 「若者達を死なせたくはありません。そして若者達を教え導く人間も」

 ヨシフのセリフを聞いたアリマは、ふふんと鼻をならすと、いやはやと頭を振って見せた。

 「水臭いというか………青臭い事を仰いますなぁ!えぇ?ヨシフ・リピンスキー学生!
  校長、自分も残りますよ!」

 「おいおい、士官学校で19歳の自分に軍人の心得を、まして士官の何たるかを教えたのは………!
 何処のどいつでありましたか?アリマ教官殿?」

 顔を見合わせたヨシフとアリマは大笑した。
 ユギノフは顔をしわくちゃにしながら笑った。
 ハーディ副官も背中を見せながら肩を震わせた。

 「よかろう、リピンスキー学生。君の要望は分かったよ」

 ヨシフとアリマは立ち上がって敬礼した。

 「では、ヨシフ・リピンスキー大尉、任務に就きます」

 うむ、とユギノフが答礼を返す。
 手を下ろした瞬間、とぼけた調子でアリマが口を開いた。

 「あ、自分は司令が秘蔵されているスコッチを所望してよろしいでしょうか」

 おいおい、とヨシフがアリマを見た。

 「なに、『軍人とは要領を持って可とすべし』ですよ。教えたでしょう、リピンスキー学生」

 司令室は大爆笑に包まれた。



 空港北側に位置する空港守備隊本部に戻った2人は、ミンスクの出迎えを受けた。

 「お疲れさまです………お帰りなさい、隊長。それにアリマ中尉」

 「うん、留守中ご苦労」

 久し振りに見る彼女の顔は砂塵にまみれてはいたが、その瞳には溌剌とした輝きに溢れていた。それに何故か妙な艶じみた雰囲気をまとっているように見えるのは、自分の気のせいか。

 あーごほん、とアリマは2人の間に流れる微妙な空気をかき消すように咳払いをした。

 「ミンスク少尉。自分は隊長のオマケなのかな?」

 「え、ああ!も、もちろんアリマ中尉も、お帰りなさい………そのお酒は?」

 顔を赤くしながら、しどろもどろになりながらミンスクは答えた。

 「なに、コイツは隊長の昇進祝いさ。ところでキエフ少尉の姿が見えないが」

 ああそれは、と言いながらミンスクは南側を指差した。

 「現在あちらで、工兵隊と対MS陣地の構築をして………」

 います、と喋り終わる前に閃光が瞬き、一拍遅れて轟音が響いた。警報が鳴り響き、周囲の人間が慌しく動き始めた。

 「おい!まだ連邦はここまで浸透していない筈じゃないのか!?」

 鼓膜がおかしくなりかけたせいで、ヨシフは怒鳴るようにミンスクに問いかけた。

 「ゲリラですよ!それも、とびきりタチの悪い連中です!」

 ミンスクは背後のヨシフに、やはり怒鳴るようにして告げた。彼女は、先程の安らいだ表情の正反対の顔になっていた。





 その頃、地中海に浮かぶコルシカ島連邦軍刑務所では、

 「なあ、アラン」

 「なんだ、ビル」

 「あれから何日が経った?」

 「3日目からは数えてない」

 無精ヒゲをしごきながら、2人の男達が無聊をかこっていた。

 地球連邦海軍地中海司令部へと、裏切り者を追ってきた筈の2人は、取調べもそこそこに収監されていた。

 「だけどよー、機体がコントロール不能になったのは、俺たちのせいじゃないないよなー」

 ウィリアムは、ほけらっとした表情で天井のシミを数えていた。

 「ふん、ベイルアウトした後の機体が駐機場に突っ込んで1個大隊分のフライマンタをミンチにしたのもな」

 アランは床の割れ目から這い出てくる蟻の数を数えていた。

 「で、火達磨になったミデアが弾火薬庫に突っ込んだのも」

 ウィリアムは鼻毛を抜いた。

 「そうさ、そこの近くをたまたま通りがかった補充のパイロット達が乗ったバスが爆風で吹っ飛ばされたのも」

 アランは小指を耳の穴に突っ込んでボリボリと掻いた。

 「その吹っ飛ばされたトラックがたまたま本部ビルを直撃したのも」

 ウィリアムは引っこ抜いた鼻毛を、ふっと吹きとばした。

 「たまたま帰投してきたパイロット達がいた区画の天井に落ちたのも」

 アランは小指の爪先にひっかかった耳垢をながめた。………デカい。

 「偶然だよなー」

 「まぁな。死人は出ていないらしいな。怪我人はパイロットばかり300名くらい出たそうだが」

 「漫画みたいな話だな」

 「それも、ジャ○プみたいなやつだ。マ○ジンだったら全員死んでた」

 「ふん、俺はサ○デー派だ」

 2人はそこで盛大に溜息を吐いた。

 「俺達、なんてツイてないんだろう!」
 

第223話「Desert hero⑱」

 投稿者:ていきっと。メール  投稿日:2006年11月19日(日)12時26分55秒
   宇宙歴0079年。
 12月もそろそろ半ばに達する時期。

 アフリカ大陸北部、上空8,000m。
 雲ひとつ無い空を、アフリカ方面航空隊所属のカーライル・クリフト少尉は、愛機のコクピットから眺めていた。

(地上部隊の連中は、上手く逃げおおせる事が出来ただろうか?)

 彼は眼下に広がる大陸に視線を向けた。今のところ、撃破されたMSや車輌があちこちにポツンポツンと見えるだけだ。それとて後1ヶ月もすれば、風に運ばれた砂が何事もなかったかのように、大地を覆いつくしてしまうだろう。

 しかし、今のアフリカ大陸は激戦の最中にあった。
 自然の手による埋葬が終わる前に、敵味方の骸の上に新たな骸が積み重ねられていく。

 カーライル・クリフト少尉には、この大陸がまるで巨大な墓所のように感じられた。

(いや、少なくとも、俺達はあの大地を墓所とする事はない)

 航空機パイロットが死ぬ時は、愛機と共に空中で爆発四散するのが過半数であるからだ。だが、それも悪くは無いと思う。
 コロニー育ちの彼は、軍に入隊して宇宙戦闘機パイロットの訓練を受け宇宙(そら)を飛んだ。しかし、地球に降りてきて、翼が濃密な大気を掴み、雲を掻き分けて飛ぶ行為は彼を虜にした。
 以来、大空に魅了された彼は、己の居場所をそこに定めた。
 だから、撤退する自軍を援護する為に、最後まで地球に留まる事を選んだ時も後悔はしなかった。周囲の人間は、『一緒に帰ろう』と翻意を求めたが、彼は空の無いコロニーに帰還する事よりも、一分一秒でも長く地球の空を飛ぶことを選択した。
 だから、撤退する自軍の殿を守る事にも、彼は淡々と承諾した。悲壮感を周囲に感じさせる事は無かったが、その普段どおりの態度に、周囲は崇高さや気高さを感じて彼をこう呼んだ。………英雄と。

 別に英雄になりたかった訳ではない。己が欲求に素直であっただけの事だから。
 眼下に敵影を見つけ事を、バンクを振って僚機(彼の考え方に同調した男達だ)に知らせると、翼を翻して逆落としに襲撃を開始する。Gに耐えながら、彼は脳髄の片隅でちらりとそんな事を考えた。

(とは言え………)

 奇襲は成功。ガン(機関砲)のセフティを解除しつつ、距離を詰めていく。

(これが戦争でさえなければ………)

 考えても詮無いことだと分かっていても、彼は考えてしまう。

(最高なんだがな!)

 ヘッドアップディスプレイの中で、翼を引きちぎられた敵機が石ころのように落ちていった。




「アジム閣下のHLVは、打ち上げに成功したようだな」

 爆音と大量の白煙を残して、HLVは高みを目指して駆け上がっていった。

「よくも支えきれたものだ」

「先日、地中海で水上部隊の連中が良い仕事をしてくれましたからね。敵機動部隊を潰してくれたおかげですよ」

「そのおかげで我々はこうしてまだ生きていられる」

 ヨシフは水筒の水を飲み干して一息ついた。
 水上部隊は、持てる力の全てを注ぎ込んで地中海の敵艦隊に攻撃を敢行。ジオン水上艦隊最後の勝利をもぎ取り、それと引き換えに壊滅した。
 連日連夜の戦闘で、部下もヨシフ自身も疲れきっていたが、とにもかくにも敵の攻勢を支えきれたのは、彼らのおかげである。


―――あのシャトルの中身が、あの糞野郎の個人的な財産だったって事を知らずに戦えたのは、彼らにとっては幸運だったのかも………

 同胞の脱出を助ける為に、戦場の荒廃に屍を晒す。
 ああ!
 何とも愛と勇気に満ち溢れている事か!
 『英雄』の2文字は、彼らにこそふさわしい。

 ヨシフはあまりのバカバカしさに口元を歪めた。

―――クソ、戦争なんざこんなものか!あぁ嫌だ嫌だ、『英雄』なんて冗談じゃない。

「これで仕事の半分は終わりましたな」

「ふん。残りの半分にとりかかるとするか………。よし、撤収準備。セレンゲティ宇宙空港に向かう」

「はっ」

 アリマは敬礼してその場を離れた。


 地球上からの撤退が決定して如何ほどの日数が経っただろうか。世界各地では撤退する友軍を支援する作戦が続いていた。
 それはここアフリカ大陸でも変わりはなく、ヨシフ・リピンスキー中尉は連日の出撃をこなしていた。もっとも、この方面のジオン軍は早々に戦線の縮小、残存部隊の統合や再編に成功しており、他の方面軍よりも組織だった撤退戦を遂行していた。
 アフリカ方面軍に残されたHLVはのこり僅か。とても全ての人員を乗せられるだけの数は無い。と、なれば、何らかの基準に則って乗員リストを作らねばならないが………まぁ、その辺はユギノフ大佐殿の仕事だ。

 自分の名がその名簿に載るかどうかは、この際考えないでおこう。
 一瞬、愛娘・サーシャの悲しそうな表情が脳裏をかすめたが、これも考えないでおく事にする。本国に家族を残している人間は自分だけではないのだ。


 同時刻。セレンゲティ宇宙空港。執務室。

「そうか………リピンスキー達がこちらに戻ってくるか」

 セレンゲティ宇宙空港守備隊総司令官・ユギノフ大佐は、疲れきった表情で、秘書官を務めるダイアナ・ハーディ少尉の報告を受けていた。
 彼女のたおやかな表情は、ユギノフにとっては目の保養であった。

「損害の度合いは?」

 そういえば、彼女は自軍が混乱の極みにあった状態でも、疲れた表情を見せる事はなく、ミンスク・チェレンコワ少尉と共に(ユギノフとはまた別の意味で)将兵の支えとなっていた。

「ヨシフ・リピンスキー中尉のゲルググは健在。小規模な戦闘はあった模様ですが、歩兵・戦闘工兵ともに損害軽微との報告です」

「そうか………よく、生き残ってくれた」

 ユギノフは、自分の教え子でもあるリピンスキー中尉の生真面目そうな表情を思い出した。

「さて、ハーディ君。次の我々の仕事だが」

「はい」

「最後のHLVに乗せる人員の優先順位リストを作らねばならん」

「はい」

「HLVの打ち上げを援護せねばならん。戦える者たちは後まわしだ」

「今後は宇宙(そら)の戦いになる。技術系の人間は最優先だ」

「はい」

「それ以外は、妻帯者を中心に年齢の若い順。その中でも兵・下士官を優先し、将校は後に」

「はい」

「残った者達は、HLV打ち上げ終了後にキンバライド基地の友軍と合流させる。それが適わない場合、降伏の許可を出す」

「はい」

「それから」

 ユギノフは、迷ったような表情を見せたが、直ぐに顔を上げた。

「すまんが、君と私はHLVには乗れん………すまん」

 ダイアナ・ハーディはいつもと変わらぬ微笑を浮かべながら返事をした。

「ええ、心得ていますわ」




 同時刻。イタリア半島北部、タラント湾。
 地球連邦軍地中海方面司令部、ヘリポート上空。

 サミュエル・ゴードン提督は、救難ヘリの座席で憤然としていた。

(クソ!アジムめ、信用するのではなかった!)

 ゴードン提督は、膝の上においた制帽を強く握り締めた。

(なにが『ジオンにはもはや組織的な抵抗をする戦力はない』だ!現に俺の艦隊は壊滅同然の被害を受けたではないか!)

 正確には、彼と情報(とそれ以外の金とモノの)交換をした男―――アジム・ディフチェイルが、自軍の残存勢力を過少評価していた(ジオン軍内部では、水上艦隊の評価は芳しいものではない)だけの事であるが、彼個人にはそんな事情など知る由もなかった。
 彼にとって、もっとも重要なのは、連邦軍の勝利が九割九分決まっていた局面で、無様な敗北を喫した事なのだ。

 やがて、ヘリが着地し、彼がヘリを降りると、完全武装の兵士が彼を取り囲んだ。出迎えにしては様子がおかしい。

「何だ、貴様らは!?」

 腕にMP(憲兵)の腕章と、情報部所属のワッペンをつけた兵士の一人がニコリともせずに言い放った。

「提督。あなたには情報漏えい―――スパイ容疑の罪で拘束命令が出ております」

「な…!」

(馬鹿な!何処からバレた!?)

「何を証拠にそんな事を………!」

「証人がいたんですよ。取引の現場に居合わせた男たちがね」


 兵士が、空を見上げるとよろめきながら飛ぶミデアの姿があった。

 証人である男達は、整備不良の機体をなだめがら空を飛んでいた。

「えい、くそ!
 アラン、もうちょっとなんだ!
 何とかならんか!」

「………駄目だ!エンジンがスクラップ直前だ!
 何故、もう少しマシな機体を選ばなかった!」

「仕方ないだろう!基地司令が飛行許可を出さなかったんだから!
 分捕れそうな機体で、飛べそうなのがコレしかなかったんだから!」

「貴様はいつもそうだ!後先考えずに無茶ばかりしやがって!」

「貴様だって乗り気だったろうが!」

「えい、くそ駄目だ!脱出だ!」


 射出座席で難を逃れたアランとウィリアムであったが、コントロールを失った機体の進行方向を確認すると、胸の前で十字架を切った。

「ウソだろ………」

 アランは、呆然とした。
 コントロールを失ったミデアは、滑走路脇に駐機していた戦闘機の列線に突っ込んで炎上。新品の戦闘機を1個中隊ほど爆発四散させた。

 やがて2人は、基地外れにある丘に降り立った。

「減棒ですめば御の字かな………」

 ウィリアムは、ぼそりとつぶやいた。

「謹慎………いや、営倉行きかな」

 アランは呻いた。
 しかし。阿鼻叫喚の坩堝と化した基地を眺めていた2人の前で、更に轟音が響いた。

「弾薬庫に突っ込んだな………」

「こりゃあ、クビ………どころか銃殺モノだな」

 2人の男は、途方に暮れた。
 

機動戦士科学講座

 投稿者:月下  投稿日:2006年10月25日(水)17時53分41秒
  「再うpをしてあげよう、君だけに!」
「いきなりあぶないネタで来るのはいかがかと思います…」
「なに?うちの作者にシノ艦長から熱烈なラヴコール?」
「はあ、そうみたいですね」
「ま、作者曰く「シノはぽんこつなようでしっかりしてるが実はぽんこつ」らしいわ」
「………つまり?」
「肝心な所でドジる、天然っ娘。この世で最もタチが悪いと言われてるわ…」
「あえて、好かれてるキャラを蹴落とそうとする作者の思考が分かりません」
「まああれよ、うちの作者ドSだから」
「あの人この前、お姐さんにコキ使われてましたよ?」
「それは幼少期からの刷り込み&トラウマだから」
「はあ、そういうものなんですか?」
「そういうものよ。ちなみに該当者二名に最初に言っておくわ」
「該当者二名?」
「作者と姐の間にフラグもルートも存在しませんからーーーー!以上」
「ものすごい作者の心の雄叫びでしたね…」
「あんなのとくっ付いたら、この世は嘆かわしくなるって言ったらしいからね」
「…………」
「さて、本題に行きますか」
「このギスギスした空気どうしてくれますか?」
「はい、というわけで劇中に登場した【DARK・FIVE】について!」
「あー、たしか課長がその一人だと…」
「そう。というわけで説明!」

【DARK・FIVE】
一年戦争時、連邦政府の元に暗躍した5人のエキスパート
その活躍が泥沼化していた一年戦争を終わらせたとも言われている。
なお、その実態は謎に包まれており、作中に登場したヒューリィ・レヴィスも単なる中年としか周囲に知られていない。
その実態を知っているのは政府高官と一部関係者のみである。
・ファントム
情報収集のエキスパートで、ありとあらゆるところに出没し、亡霊の異名を得た。
そのスタイルは独特で黒いコートとサングラス、そしてミッション遂行中には葉巻を吸っている。
・イビル・ブレイン
一年戦争のありとあらゆる戦術草案を立てた天才。
現在は行方不明となっている。
・ガーディアン
要人警護のプロフェッショナル。
彼により窮地を脱した人物は少なくない。
現在も警護の任務に当たり、DARK・FIVEの中で最も有名。
・ルック
最も正体が不明とされる人物。
どのような任務を遂行したのかさえ不明。

「以上」
「って、四人しかいませんけど」
「あれ?アンタ知らないの?」
「なにがですか?」
「最後の一人はアンタでしょ?閃光の魔女?」
「え?ええーーーー!??」
 

なぜあな オルタネイティブ

 投稿者:たまきょうミクト  投稿日:2006年10月25日(水)03時50分7秒
  「代替案ですか」
「そうみたいだねー。何、「かってに~」が成案になるっつーの?」
「あ、今日はアイさんですか」
「ういーっす、真実探求者のアイどえーす」
「ちなみに聞きたくもないですがかんちょーは」

I LOVE GEKKA-!!
はいリマちゃんも一緒にやって!」
「あ、あの、何でいきなりラブコールを・・・・?」
「私はぽんこつじゃなーい!!極めて遠く、限りなく近い世界ではぽんこつじゃなーい!!」


「・・・でも、『見た目良い人』っぽく見えるだけで
実際はしっかりぽんこつだと思うんですが」
「良いんじゃないのー?偶には夢見させてあげてもさー。何せマナマナ判定でしょや」
「まあ、これだけの軍勢に囲まれておきながら
正ヒロインの役なんて狙うからいけないんですが。MOAじゃリスキーさん。
MOFじゃ私とリマさんって既に決まってる、決定事項なのに」
「人ってのはさー、何かに挑み続けたくなるんだよねー」

「でー?今回は何の言い訳タイム?」
「多分、行き当たりばったりで書いた過去話が
イマイチ伏線消化しきれなくなりそうな事で焦ってるんじゃないでしょうか」
「あー。アレね。そもそもさ、オートマタ技術とAI技術は全然別個だのに
無理矢理同系列に考えるからおかしくなるんだよね。
まあ、MS自体を巨大な人形って考えれば無理は無いんだけど」
「でも今度は時系列的に無理が」
「そこは良いんじゃないの?何も考えてないヴァカだし」
「ヴァカですか」
「うん」

「でー、何時からエリスっち、変態1号の事マスターって呼び直したのさ」
「さあ?覚えがありません」
「いや、2レス前ね」
「覚えにありません。てゆーか、絶対呼ばないと思います」
「いや、まあヴァカの説明不足もさることながら
この世界に居る約3人の絶対神のうちの一人がね」
「そうですかヴァカがいけませんか。殺ってきます」
「あー、だからM500を仕舞いなって・・・・・・・・行っちゃったよ」


「り、リマきっく参式ー!!」
「ファントムライダーって言い方が格好良いよねってにょもろ!?」
「え、えーと、リマぱんち壱拾弐式『リュウヤ殺し』-!!」
「しょ・・・・・・・・・・・・・・しょんぼり・・・・・・・・・・」
 

かってになぜなにミラージュ

 投稿者:月下  投稿日:2006年10月21日(土)17時46分45秒
  「シノと~」
「エリスの…」
「あ、あとリマも居ます」
「「「なぜなにミラージュ~」」」
―――
「いいんでしょうか?勝手に連邦サイド作者が書いてますが」
「だって、うちの作者だといつまた出番が来るかわからないじゃない~」
※このシノの台詞に連邦作者の意図は一切含まれません。。。
「ま、責任は作者が取るという方向で。タイトルも「かってに」が付いてますし」
「はーい、そういうわけでいってみよー!」
「ようやく、マス…バウンスの尻尾を掴めた訳ですか?」
「そうそう、およそ一年も間延びしてようやくなの」
「それもこれももう一人のれ連邦作者がなかなかUPしないせいですか」
「さっきから敵を作りそうな発言ばかりだね…」
※このエリスの発言にもうひとりの連邦作者の意図は一切、それはもう一切含まれません。
「地上編とか宇宙編とか回想編とかこのままだとどうにもなりそうにならないので叱咤激励ですよ」
「言い方次第じゃないかな?かな?」
「さて、すでに3日間とか言いながら月では二週間くらい時間が経ってます。
 予定狂いまくりです。
 作者どもは士道不覚悟で切腹」
「だーかーらー、もう少し言い方をね?」
「教育的指導っ!」

暫く

「さて、もうすぐ月を離れるわけですが、それまでにDESERT・HEROが終わってくれないとどうにもなりません」
「急かさないでー」
「こっちで勝手に書いちゃいますよ?」
「ぎゃあ!自分で自分の首を絞めてるー」
「ふう、ところで…」
「なに?」
「リマ、あなたはなにか喋らないの?」
「………………エリスさんの剣幕が怖すぎてムリです…」
「この小娘が!(くわっ)アンタなんかMOFで触手ネタの犠牲にでもなっておしまい!」
「エリスちゃ~ん、性格が変わってるー」
「作者が変わってるから、性格も変わります」
「無理矢理だね…」
 

第222話「闇に灯る火」

 投稿者:月下  投稿日:2006年10月21日(土)17時34分21秒
  「お邪魔します」
「ええ、歓迎しますわ、ルーティ・スウェント艦長」
その日、ルーティはステークバット旗艦「灰色の虹」にいた。
出迎えたのはシノとエリス、それからリョウカの三名である。
「久しぶりね、こうやって直に話すのは」
「そうね、一年戦争が始まる前だから…、もう9年ぶりかしら?」
笑顔を装ってはいるが、二人の視線は激しく火花を散らしている。
「はいはい、そこまでそこまで。。。
 で?緊急でお会いしたいとの件、どのようなものでしょうか?」
珍しくシノがまともな受け答えをしてる。
今の彼女はステークバット隊のトップとしてそこにいるのだ。
「おっと、ここは会談には向きませんね。
 私のプライベートルームでよろしいでしょうか?」
「ええ」
シノを先頭にルーティとエリス、殿をリョウカが続く。
「どうぞ」
「失礼」
ソファに腰を降ろし、少しの間、シノとルーティはお互いをじっと見やる。
「あー、ゆっくりできますよー」
開口一番にぶっ飛んだ発言がシノの口から飛び出した。
「いやースタッフの手前、格好をつけなきゃ様にならないですし~
 というわけでルーティちゃん、御用はなーに?」
「ルー…、ティ…ちゃん?」
「これが艦長の実態よ」
すばやくエリスがフォローに回る。
「いきなり、ちゃん付けされるのには驚いたわ…」
「で?用件は?」
「昨日、うちのエースの部下がこんなものを手に入れたの。
 面白いわよ」
ルーティは小脇に抱えていた封筒を差し出す。
受け取ったエリスは封筒を開け、中身の書類に目を通す。
「これは…」
「あーエリスちゃんばっかり!私も見せて~」
その書類を手に取ったシノの表情もやがて硬化する。
「バウンスの動向、とはいってもほんの尻尾だけど掴んだのよ。
 最もその場所がここから地球を挟んで真逆にあるなんて哀しい話だけど」
自虐交じりの笑みを浮かべる。
「よくマスターの情報なんて見つけられたわね?
 敵をほめるわけじゃないけどあの人はそう簡単に尻尾を掴ませるようなヤツじゃないわ?」
「アンタ、敵だとかいいながらなんでマスターなんて言い方してるのよ?」
「癖よ、直そうと思ったけどなかなか直るものじゃないわ。
 こっちだって反吐が出そうなんだから」
「そう」
真剣な様子で書類を読んでいたシノが顔を上げる。
「答えられる範囲で構いません、どうやってこれを?」
シノのそれにルーティは頭を振る。
「「ファントム」って知ってるでしょ?」
「知らない方がおかしいんじゃないの?」
エリスの割り込みを気にすることなくシノが後を続ける。
「一年戦争を終わらせる『決定的な要因』となった五人【DARK FIVE】の一人ですね?
 ありとあらゆる情報を網羅したという…」
「正解。私の知り合いにそれと繋がりのある人間がいてね。
 まあご本人がなんの因果が情報を提供してくれたって話」
シノは少しだけ考える。
――ファントムといえばその情報の信頼性は随一。
  ならば…
彼女は昔、一度だけそのファントムと会ったことがある。
おそらくは偶然に偶然が重なり、会えたのだろうが…
黒いトレンチコートとサングラス、そして葉巻。
―――【幽霊はどこにでも現れる、また逢おう】―――
そう言って消えた彼の姿を彼女はまだはっきりと覚えている。
「わかりました、追撃します。
 リョウカちゃん、たった今より第2種厳戒態勢。
 メカニックさんたちには機体のトリプルチェック、パイロットの皆さんには集合を」
「了解しました」
リョウカは敬礼の後、急いで部屋を出て行く。
「さて、私も用がありますのでこの辺で…
 この同盟が長く続く事を願ってますわ」
「同じく」
最後に軽くふたりは握手すると、ルーティはエリスに先導され部屋を出て行った。
―――――
誰もいなくなった部屋。
シノは力なくイスにもたれかかる。
――また戦い、か…
誰かが死ぬかもしれない。
傷つくかもしれない。
それが彼女自身やるせなかった。
軍人の心得としてはあってはならないが、彼女は平和を欲した。

彼女の頬を一筋の涙が伝い落ちた…
 

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